借金を返済することでわかったこと

できることならしたくない、なるべくなら避けて通りたいもの、それは私にとって借金以外のなにものでもないです。

父と母が二人で営む小さな工場の家に私は生まれたので、幼いころからお金に対するいろいろな面を見てきました。

借金も多くあったと感じていました。しかしまだ小さいころはそれがとても大変なことだとはわかっていなかったのです。

月日は流れ、私も無事に社会人となった時、父親から相談を持ちかけられました。

私の名義でお金を借りてほしい、とのことでした。最初は意味がよくわかりませんでしたが、どうやらもう父親の名前でお金を借りることが出来ないくらいの状態までになっていたようでした。私は悩みました。小さいころから何となく感じていた、借金の暗い重たいイメージがどうしても払拭できません。断ることもできました。しかし、私がここまで大きく育ってこれたのも、父親ががんばって働いて育ててくれたからという思いもあり、お金を借りることにしました。

実際、お金を借りて父親に渡した金額ではどうにも足りないくらい、工場の経営は悪化していました。その後、私は借金を繰り替えし、父親も今まで以上に働き、なんとか経営が持ち直すまでに実に10年という歳月を要しました。

しかし、私の借金はまだ残っていました。そこから自分の毎月のお給料を借金返済に充てる、ということがさらに5年続きました。

最後の返済を終えた日、私は喜びで胸が熱くなり、うっすら涙目にすらなっていました。その頃、私たち家族の努力もむなしく実家の工場はすでになくなっていました。

借金とは、いったいなんだったんだろう。

お金より、愛が大事。確かにそれはうそではないし理想でもあります。

私が借金をすることでわかったのは、お金は人生を狂わすほどの強大な力を持っているということです。あの時借金さえ負わなければ、また違う人生、もっと若者らしく遊ぶ人生を送っていたかもしれません。運よく私は全額返済することができましたが、そうではない人もいると思います。お金があってこそ、人を愛することもできる。もし返済地獄に陥っていたら、今この文章を書いていることもなかったと思います。

それ以来、私は日々つつましく、借金とは無縁の生活を過ごしています。もう二度と、借金をすることはないでしょう。